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人の潜在能力を引き出しパフォーマンスを上げる「コーチング」とは何か?-その5

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コロナの影響でテレワークが増える中、部下とのコミュニケーションに課題を抱えるマネジャーの方は多いと思います。1on1でしっかりとコミュニケーションを取り、社員の潜在能力を引き出し成果に繋げる。そのためのコミュニケーション手法が「コーチング」です。

世界的にも通用する「LDVコーチングメソッド」によるコーチングの方法を伝授します。今日は5回シリーズの最終回です。

LDVコーチングメソッドの基本コンセプト

LDVコーチングメソッドコンセプト図
私が前職ネスレ日本(株)で行っていたトレーニングプログラムを基に新たに開発した「LDVコーチングメソッド」の基本コンセプト(全体像)です。

LDVとは「リーダーシップ・ディベロップメント」のことで、管理職やリーダー職のみならずコーチーである社員を含め、全社的なリーダーシップの醸成に役立ちたいとの思いから命名しました。

1.2つの土台:信頼関係、コーチングの心構え
2.3つの役割:教える、導く、支援する
3.4つのスキル:傾聴、質問、挑戦、フィードバック
4.GRROWプロセス:目標→現状→対策→行動する意志

過去のブログでは、「1.2つの土台」から「3.4つのスキル」までお話ししました。今回は「4.GRROWプロセス」について説明します。
注)*コーチングをする人=コーチ、コーチングを受ける人=コーチーと呼びます。

GRROWプロセス:目標→現状→対策→行動する意志

プロセスを考える
「プロセス」とは、「進行」や「過程」という意味です。つまり、コーチングという会話を行うにあたり、どういう過程をたどりどのように進行すれば良いかを示した道標のようなものと解釈してください。

「GRROWプロセス」とは、そのプロセスを以下に示す4つの過程に分けたもので、「GRROW」はそれぞれの過程の英語の頭文字です。
1.G:Goal(目標)
2.RR:RealityとResource(現状)
3.O:Option(対策)
4.W:Will(行動する意志)


「GRROWプロセス」は「GROWモデル」とも呼ばれ、企業活動においては主に問題解決のプロセスとして日常的に使える効果的なプロセスです。
多くのコーチングのテーマは、目標達成のための問題解決や課題克服を伴うものです。よって、GRROWプロセスは、効果的なコーチング会話を行うために有効な会話プロセスと言えます。


ではそのプロセスを一つずつ説明します。

GRROWプロセス1:Goal(目標)

「目指す目標・解決すべき問題、期待する結果、成果を明確にする。」
真の問題は何か、何を持って達成とするか、あるべき姿にたどり着くまであいまいにせず徹底的に話し合うことがポイントです。
コーチング会話の出発点でもあり、Goalを明確にすることにより、あとのプロセスにスムースにつながっていきます。


相手(=コーチー)はこの時点で目標や目指す方向がはっきりせず、問題も表層的であいまいな場合も多いです。このような時でもコーチはコーチングスキル(特にここでは傾聴と質問のスキル)をフル活用して、目指すべき目標や真の解決すべき問題を明らかにしコーチーとしっかり握らなければなりません。さもなければこの後のコーチング会話がしっくりこず会話にすれ違いやズレが生じてしまいます。

コーチング会話がうまくいかない多くの場合が、このゴールを明確に描けなかったり真の問題にたどり着いていなかったり、またそれらをコーチとコーチーが握れていなかったり(=同じゴールを描けていない)することが原因なのです。

真の問題にたどり着くまで傾聴し質問する

例えば、コーチーは表層的な問題として
「体重を減らしたい、どうしたら良いか?」
と話したとしても、コーチが真の問題を探る質問を繰り返した結果、
「異性にモテたい」
あるいは
「病気予防のため、メタボ体質を改善したい」
が真の問題であると判明したら、その後のコーチング会話の展開は全く違ったものになるでしょう。

Goalのプロセスでの質問のポイントは
Why(なぜ)
です。
表層的な問題やあいまいな目標の背景を探っていくことがカギとなります。

GRROWプロセス2:RealityとResource(現状)

「現状を確認し、有益な洞察によって目標達成に向けての課題を明らかにする。使えるリソース(資源)も洗い出す。」

Goal(目標)プロセスで明らかになった達成すべき事項、あるべき姿に対し、現在の状況をあらゆる観点から洞察し、ギャップを明らかにします。同時にヒト、モノ、カネ、情報の面から使えるものはないか、見落としはないかを確認します。

このプロセスでは、目標達成を阻むネガティブな現状に目が行きがちですが、うまくいっている事項にも目を向けましょう。それがこれ以降の「対策」のプロセスで役に立つ場合があります。

リソース(資源)についても、コーチーは視野が狭くなる傾向があります。このような場合にコーチは、
「〇〇部の△△さんはこのプロジェクトの経験があるよ。ちょっと聞いてみたらどうかな」
という風に投げかけ、ヒト資源や情報資源の観点から視野を広げる手助けをしましょう。

GRROWプロセス3:Option(対策)

「課題を解決し、目標達成の為の対策を導き出す。」

RealityとResource(現状)プロセスで明らかになった目標達成のために埋めるべきギャップ、課題を解決するために取れる対策を考え、出来る限り多くの打ち手を導き出します。

このプロセスでもコーチーは視野を狭くして打ち手を考えがちになりますので、
「他に対策はありませんか?」
「代替策はありませんか?」
「リソース(資源)に限りがないとすればどんな打ち手が考えられますか?」
このようなオープン質問でどんどん視野を広げてあげましょう。

このプロセスでは「できる」「できない」をあまり意識せずアイデアを多く出すことがポイントです。アイデア出しは質より量です。この点をコーチーに伝え励ましてください。

GRROWプロセス4:Will (行動する意志)

「内容確認し、同意した上で5W1Hに基づき、課題解決、目標達成の為のアクションを決める。」

Option(対策)プロセスで導き出された打ち手から課題解決、目標達成のために優先的に取り組むべきアクションを具体化した上で合意します。

このプロセスでは、「できる」より「しなくてはならない」に重点を置きます。「できる」ことを優先すると課題解決と目標達成が困難になる可能性があるからです。

コーチーにとってそのアクションは「ストレッチな範囲」に入っているかもしれません。しかし、コーチは挑戦のスキルで一段高い能力を引き出しより高い成果に導くことが重要です。

「Will」とは「コーチーの意志」です。コーチが指示することなくコーチー自らが「このアクションを取ります」と一歩前へ踏み出す。このことによりコーチーの自走を促し仕事へのモチベーションをアップさせます。

たとえそのアクションが失敗した(=成果につながらなかった)としても、怯まず再度「目標」と「現状」に戻り新たな課題を設定し、「対策」を考え次のアクションを取ります。

さいごに

コーチとコーチーが伴走して成功に導く
5回に渡り「LDVコーチングとは何か」について説明してきました。わかったつもりでも実際にやって成果を出すのは難しいものです。しかし、コーチングも経験してみないと能力は身に付きません。失敗しながらもやり続けることが大切です。皆さんの業務の一環として取り入れていただき、コーチングを受けた方が業務で成果を上げることを願っております。

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